これから紹介する11の確認ポイントを抑えておけば、BtoBサイトのビジネスインパクトが大きな分析はほぼできます。(詳細分析を行う場合はこの限りではありません)
記事の内容をよりわかりやすくするために、スライドにまとめました。無料でダウンロードできます。
こんな課題・要望をお持ちの方におすすめ
- BtoBサイトの分析で何を見たら良いかわからない
- BtoBマーケターとしてサイトの状況をざっと把握したい
- Googleアナリティクスは見れる項目が多すぎて、何のレポートを見れば良いか悩む
- 毎月のレポート作成に手間がかかっている
- 何のKPIを追いかければ成果に繋がるかわからない。
BtoBサイトの目的の多くは「見込み客を創出する」こと。見込み客を創出するためには、顧客とのタッチポイントを抑えることが重要です。タッチポイントを制するものは、BtoBマーケティングを制すといっても過言ではありません。
BtoBのWEBマーケティングでは、「集客」「見込み獲得」「見込み育成」の3軸で適切な打ち手を用意しておく必要があります。
この3軸に関する詳細は、【寄稿】3つの軸で考えると視界が開ける!BtoBのWEBマーケティング戦略立案の勘所で紹介しているのでご興味あればご高覧ください。
そして、BtoBのウェブマーケティングの核となるBtoBサイト自体の分析改善もこのタッチポイントを意識して行うと、何を改善すれば良いかわかりやすくなります。
BtoBサイトの改善は遊園地のマーケティングと同じ。決して特殊なものではない。
BtoBサイトのウェブ解析になると、とたんに専門用語が頻出します。セッション、コンバージョン、直帰率・・・。これらを理解しようとすると用語を覚えなければならず、アレルギーが出る方もいるので、なるべく使わないようにします。
BtoBサイトの分析は、特殊なものではありません。
例えるなら、遊園地のマーケティングのようなもの。
あなたがもし遊園地の売上を伸ばすというミッションを持っているとしたら何を考えますか。
「遊園地の売上=人数×客単価」のため、伸ばすとしたら人数に関わる集客軸と、客単価に関わる行動軸を意識することになります。
- 遊園地に来ていただく =集客
- 園内で楽しんでいただく(好きになってもらう) =行動
- 飲食、グッズなどを購入いただき、また来ていただく =ゴール
BtoBサイトの分析も遊園地のマーケティングと同じです。
- サイトに来ていただく =集客
- コンテンツに触れていただく(信頼される) =行動
- 資料ダウンロードや見積もり依頼をしていただく =ゴール
では、遊園地のマーケティングを頭の片隅でイメージしながら、まずはBtoBサイトの分析の基本を抑えていきます。
BtoBサイト分析、3つの基本
1. 分析の基本は、鳥の目から虫の目の視点で
ウェブ解析を行う際は「鳥の目」から「虫の目」の流れで分析すること。鳥のように上から俯瞰して全体像を把握してから、虫のように低いところから上からは見えなかった部分を把握していくと、改善点を適切に判断できます。
2. ビジネスインパクトが大きい改善に集中する
サイトの分析に凝りだすと、細かな点が気になります。”神は細部に宿る”という言葉通り、細部をおろそかにしない方が良いのは間違いありませんが、一方で時間は有限のためビジネスインパクトが大きいか否かといった視点も重要です。
ビジネスインパクトが大きいページは「よく見られるページ」「コンバージョンに近いページ(フォーム)」の2つです。
3. BtoBサイト分析の基本は、「集客軸」と「行動軸」
先ほど遊園地のマーケティングに少し触れましたが、BtoBサイトはいかに集客し、いかにリード獲得に繋がるコンテンツを読んで信頼されるかが重要です。だから、集客軸と行動軸に着目した分析を重視します。
それでは、上述のBtoBサイトの分析の基本に沿って、抑えるべき11のポイントを確認していきます。
BtoBサイトのサマリーを見る
1. 月間の集客数とコンバージョン数、コンバージョン率を把握する
繰り返しになりますが、BtoBサイトでまず抑えるべき軸は、集客と行動(リード獲得)の2軸。集客軸のKPIとなる集客数(ユーザー数)と、行動軸のKPIとなるコンバージョン数(リード獲得など個人情報が取れる数)、そしてコンバージョン率(コンバージョン数/ユーザー数)は意識しておくべき数字です。
目安としては、コンバージョン率が0.5〜1.5%になっているのが理想。(商材により異なるのであくまで目安です。オウンドメディアのような読み物やハウツー記事が多く、メルマガに力を入れているBtoBサイトはこのコンバージョン率はかなり異なります)
コンバージョン率が0.5%を割っている場合は、リード獲得に繋がる仕掛け(お役立ち資料のダウンロードやリード獲得に至るまでの導線)を強化すべき。逆に、0.5〜1.5%を上回っている場合は、集客を伸ばすことに重きを置くべきです。
2. モバイルの集客比率を把握する
ですが、分析の初期段階でモバイル比率を注視するのは理由があります。なぜなら、最近のBtoBサイトはレスポンシブデザイン(パソコンとスマホでウェブサイトのレイアウトが異なる)になっていめ、ユーザーの動きが異なる可能性があるからです。
また、通勤時間や昼休みにスマホでBtoBサイトをざっとチェックして、続きはパソコンで調べるといった行動をされている方も多いです。
従って、分析する際の前提が異なると結果がブレることがあるため、分析の初期段階でモバイルからの集客比率を意識しておくことをおすすめします。
これは私の感覚値ですが、モバイル比率が40%を超えたら、モバイルのみでセグメントを切って別途分析をした方が良いと考えています。
この分析は、Googleアナリティクスでは[オーディエンス]-[モバイル]-[概要]レポートで確認できます。
3. どこから来ているのか(集客チャネルの比率や傾向を把握する)
BtoBサイトの場合、日・週単位では大きな動きがないことが多いので、過去1〜2年の月別推移で傾向を抑えておくことをお勧めします。
傾向を抑えるときは、大きな流れで、自然検索数は増加傾向なのか、広告施策はいつ行なっているのか、全体の集客数は増えているのか減っているのかなどを確認します。
特に、コンテンツマーケティングのような自然検索での流入を増やす施策を行なっている場合は、コンテンツを公開してから効果が出るまでに半年から1年程度かかることもあるため、月別の推移を抑えておくことが重要です。
ちなみに、BtoBサイトの場合、自然検索(オーガニック)からの流入比率は広告施策を行なっていないと70〜80%程度になることもあります。
この分析は、Googleアナリティクス では[集客]-[すべてのトラフィック]-[チャネル]のレポートで確認できます。
BtoBサイトの集客軸
4. どこから来ているのか(集客チャネル毎に掘り下げる)
ここからは集客を深掘り分析していきます。まずはどこから来ているか、チャネル別に掘り下げます。
Organic(自然検索)を深掘りすると、GoogleやYahoo!などどの検索エンジンからの流入が多いかわかります。
Socialの場合は、TwitterやFacebookからの流入数がわかります。ここではどのチャネルからの流入が多く、コンバージョン率が高いのかをざっと把握します。
この分析は、Googleアナリティクスのチャネルで確認できます。
5. 優良ユーザーがいる外部サイトはないか
BtoBサイトは自然検索からの流入に頼っていることが大半です。より多くの集客を行うために広告施策を打つことも手段の1つですが、外部サイトを確認することも効果的な改善施策に繋がる可能性を秘めてます。
Googleアナリティクスで参照サイトをみると、集客数が多く、直帰率が低いまたは平均PVが多い外部サイトが見つかることがあります。
もし見つかれば、その外部サイトは自事業にとって優良な(コンバージョンに繋がりやすく相性が良い)ユーザーがいる証拠です。
この外部サイトからの集客数を増やす施策(外部サイトに広告を打つ、外部サイトと何らかの協業をするなど)の検討をお勧めします。
6. Google自然検索では、どのページにどんなキーワードで来ているのか
この分析は、Googleサーチコンソールを使用します。(Googleアナリティクスでサーチコンソールを連携させておけばGoogleアナリティクスの画面で見ることもできます)
BtoBサイトの場合、最も大きな集客チャネルは自然検索であることが大半です。したがって、どんなキーワードでどのページに来ているかを確認します。
ここでは傾向を見るだけで良いです。集客を改善するための分析は次のポイントで行います。
7. 改善するキーワードは何か
このターゲットキーワードを分析するツールの代表格がGoogleサーチコンソールです。
Googleサーチコンソールで分析してわかることは、おもに下記の4点です。
- サイトがどのようなキーワードで集客できているのか?
- サイト内で使われているキーワードは、検索ニーズがあるのか?
- サイトの集客力を改善できるキーワードはないか?
- 想定外のキーワードで、検索結果に表示されていないか?
今回は、集客の改善にフォーカスしていきます。
サーチコンソールは、そのままのデータでは改善ワードを見つけ難いため、CSVでダウンロードし加工する必要があります。上図の通りバブルチャートを使用し、X軸に平均掲載順位、Y軸に表示回数、バブルの大きさをクリック数に設定します。
すると、X軸の掲載順位が20〜5位程度で、表示回数が多いワードが見つかることがあります。この領域にあるワードは、既存コンテンツを改善すると集客数が大きく増える可能性が高いと言えます。
BtoBサイトの行動軸
行動軸では、コンバージョンに貢献しているコンテンツを確認しながら傾向を掴んでいきます。
鳥の目から虫の目の順で大きなところからドリルダウンしながら分析を進めます。
BtoBサイトはコンバージョン数が少なくなりがちなので、分析結果がブレないよう期間を長めに設定することをおすすめします。
8. ランディングページの直帰率は健全か。2ページ目はどこへ行くのか
まずは入り口ページ(ランディングページ)を確認します。例えば、自然検索の行で直帰率を見ます。
自然検索で直帰率が高いということは、検索ワードとページ内のコンテンツに不一致が生じている(検索したユーザーが期待していることが書かれていない)ことが考えられます。
目安として、直帰率50%を超えるようでしたら詳細分析をおすすめします。ブログのような読み物記事の場合、直帰率は80%以上になったりするのであくまで目安です。
この分析は、Googleアナリティクスの[行動]-[サイトコンテンツ]-[ランディングページ]で確認できます。
次に、入り口ページ(ランディングページ)から2ページ目の遷移も確認します。ランディングページを見た後にどのような情報を求めているのかを確認できます。ただし、ページのレイアウト(ボタンの配置など)にも影響される項目のため、この分析は実際のウェブページを見ながら確認してください。
この分析は、Googleアナリティクスの[行動]-[サイトコンテンツ]-[ランディングページ]の画面で、セカンダリディメンションを[2ページ目]に設定すると確認できます。
9. どのコンテンツ群(ディレクリ)がコンバージョンに貢献しているか
まずは、ディレクトリ単位でコンバージョンに貢献しているコンテンツを分析します。例えば、「導入事例」「お役立ち情報」「特長」「課題解決ソリューション」といったディレクトリがあるとします。
コンバージョンを「資料請求」で絞ったときに、「課題解決ソリューション」ディレクトリでのコンバージョンが多ければ、課題解決コンテンツを見て資料請求をするユーザーが多いとの仮説を立てられます。
また、コンバージョンを「問い合わせ」に絞ったときに、「導入事例」ディレクトリでのコンバージョンが多ければ、「導入事例」が問い合わせに直結する鉄板コンテンツになるかもしれません。
この分析は、ページ導線やCTA(※)の改善に役立ちます。
また、ステップメールなどでシナリオを作る際のヒントにもなります。
Googleアナリティクスでは[行動]-[サイトコンテンツ]-[ディレクトリ]レポートで確認できます。
「Call To Action」の略。ウェブ
10. どのページがコンバージョンに貢献しているか
9番のディレクトリ単位のコンバージョン分析の詳細版です。
ディレクトリ単位の分析では「導入事例」「お役立ち情報」「特長」「課題解決ソリューション」とレイヤーで傾向を分析しました。
今回はさらに深掘りしページ別で見ることで、より具体的にコンバージョンに貢献しているページがわかります。
例えば、○○の記事から○○資料がよくダウンロードされているといった分析が可能になります。
この分析は、Googleアナリティクスの[行動]-[サイトコンテンツ]-[すべてのページ]画面で、セグメントを[コンバージョンに至ったユーザー]に設定し確認できます。
この分析を行うとキラーコンテンツ が見えてくるため、リードナーチャリングのシナリオ設計がしやすくなります。
11. コンバージョンするまでの経路は?(ゴールデンルートはどこか)
コンバージョンするまでの経路を確認します。
例えば、問い合わせしたユーザーは、どのページを見て問い合わせをしたのか。資料ダウンロードするユーザーはどのページを見ているのかといった傾向がわかると、ページ導線の改善やステップメールでのシナリオ作成時のヒントが見つかる可能性があります。
この分析はコンバージョンによって経路が異なることが多いため、コンバージョン別に行うことをおすすめします。ちなみに、Googleアナリティクスでは3つ前まで遡って追うことができます。
また、上図のようなページ単位ではなく、下記図のようなチャネル単位で確認することもできます。
改善のヒントを見つけるその他の方法
サイト内で、どんな情報を探しているのか
Googleアナリティクスでは、サイト内で検索したワードを確認することができます。
このワードは貴重です。なぜなら、ユーザーがサイト内で自分の意思で探している言葉だからです。検索してまで探しているということは、こんな情報が欲しいと期待しているか、どこにあるのか探せないかのいずれかです。
期待している場合は、コンテンツ制作のヒントに。探せない場合は、導線の改善のヒントになります。
例えば、商品サービスに関する情報は豊富にあるが、ユーザーが求めているのはサポート情報だったということは十分あり得ます。
いずれにしても改善のヒントが得られやすい分析手法の1つです。
訪れる企業や団体はどこか(co.jpとgo.jpとac.jpのみ)
自社サイトにどこの企業が訪れているかは気になるものです。本当にユーザーが来ているのか。代理店や競合他社が多いのではないか。
このような分析が、Googleアナリティクスのネットワークドメインで確認できます。
競合他社からのアクセスが普段より多い場合は、新製品の検討、競合研究、ウェブサイトの改善など何かしら考えているかもしれません。
一方、代理店が多い場合は、代理店が欲しがるコンテンツを手厚くすべきかもしれません。
【2020.02.24追記】
Googleアナリティクスではデータが取得できなくなりました。
何曜日のどの時間帯に来ることが多いか
BtoBサイトの場合、平日の仕事時間中に訪れることが大半です。職種によって多少の傾向はあるかもしれません。例えば、総務や人事やエンジニアなど内勤職の場合、営業などの外勤職の場合では異なる可能性があります。
メルマガ配信やサイト更新で言えば、時間帯は一般的には通退勤時やお昼休み前後などが良いと言われています。
一般論に捉われず、自社サイトのユーザーの傾向を把握すると気付きがあるかもしれません。
分析改善を効率的に!Googleデータポータルのダッシュボード、作りました。
上記の11の確認ポイントをGoogleアナリティクスのレポートで1つずつ確認するのって手間ですよね。
私自身、20くらいのBtoBサイトを見ているので、分析と定点観測、改善案出しが正直大変で。。
だから、Googleデータポータルで11のポイントを盛り込んだダッシュボードを作りました。
BtoBサイト専用の健康診断レポートに関する詳しい紹介はこちらです。
このダッシュボードは、どのGAのビューでも使えるよう、特殊な加工はせず汎用的にしています。誰でも無料で個人情報の入力なしで使えるため、ご自由に加工してご利用ください。
なお、本稿で紹介したSearch Consoleの分析手法は、データポータルには実装していません。Search Consoleも実装したい方、データポータルによるダッシュボード作成に自信がない方は有償ですが、個別にご対応いたします。こちらのお問い合わせフォームまたはTwitterでご連絡くださいませ。
BtoBサイトを改善する11のポイントのまとめ
BtoBサイトの改善手法の基本を紹介しました。
2つの分析軸と11のポイントは下記のとおりです。
<サマリー>
- 月間の集客数とコンバージョン数、コンバージョン率を把握する
- モバイルの集客比率を把握する
- どこから来ているのか(集客チャネルの比率や傾向を把握する)
<集客軸>
- どこから来ているのか(集客チャネル毎に掘り下げる)
- 優良ユーザーがいる外部サイトはないか
- Google自然検索では、どのページにどんなキーワードで来ているのか
- 改善するキーワードは何か
<行動軸>
- ランディングページの直帰率は健全か。2ページ目はどこへ行くのか
- どのコンテンツ群(ディレクリ)がコンバージョンに貢献しているか
- どのページがコンバージョンに貢献しているのか
- コンバージョンするまでの経路は?(ゴールデンルートはどこか)
最後に、BtoBサイトの分析は必ず1次情報の定性データを見聞きし仮説を立てた上で行うことを強くおすすめします。BtoBプロダクトはBtoCと違い(多くの場合)自分がユーザーになれないため顧客の本当の気持ちを掴みにくい傾向があります。だから、私自身も、許される限り時間をつくり顧客から直接ヒアリングしています。
BtoBマーケターや分析レポート作成担当者のお役に立てれば幸いです。
シリーズ関連記事
この記事は、「BtoBのWEBマーケティング戦略を加速する」シリーズの1コンテンツです。
自社サイトをWEBマーケティングに活用するためのヒントをまとめています。
ぜひ、他の記事もお読みいただけると嬉しいです!
<戦略編>
<サイト構築編>
- BtoBのWEB戦略を加速する。商談を増やすコンテンツマーケティング虎の巻
- 【事例付】BtoBサイトのコンテンツマーケティング手法31選
- BtoBサイト トップページの作り方
- BtoBサイト 展示会出展レポートページの作り方
- BtoBサイト 導入事例ページの作り方
- BtoBサイト 課題解決ページの作り方
<テクニック編>