働き方改革への注目が集まっています。
この流れに乗り、2018年に入ってからは”社内副業制度”が話題になり、2019年、2020年も引き続きニュースが出回りました。
・社内副業制度に関するニュース記事
ここ数年、サラリーマンの働き方は劇的に変化している。そのひとつが、副業に対する考え方だ。 かつては大手企業に限らず…
リコーは来春、社内副業制度の導入を目指す。若年層を中心に従業員が1週間の勤務時間のうち、特定の時間を自らが希望する業務…
丸紅は4月から全従業員を対象に勤務時間のうち15%で通常業務から離れ、新しい事業の考案など「社内副業」に取り組むよう義務…
自分の名前で仕事をしたい人のための非営利支援団体「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 (…
また、Googleで検索される数を見ても、”副業”キーワードは増加しています。
(下記の図はGoogleトレンドの調査結果)
・「副業」キーワードの検索ボリューム月別推移
私自身も、社内副業制度に関する考えを過去にまとめたことがあります。
政府主導で”働き方改革”が叫ばれ、実行に移されようとしている。 安倍首相は、第3次改造内閣を発足させた2017年8月3日の記者会見でも「働き方改革はいよいよ実行の段階に移る。必要な法案の成立を目指す」と強調していた。 一方、ベン[…]
この記事、賛否両論ありました。
例えば、「社内副業」の定義はこれで良いのか?など。私は社内副業の定義を”報酬は問わない”としましたが、少なくとも成績や評価の一部として還元されるのが当然だろとの声などを頂戴しました。
このご指摘は、確かに一理あります。
だから、社内副業制度に関する考えを述べるからには、私自身が実践しなければ机上の空論でしかないという思いがありました。
そこで、社内副業を実践することに。制度のメリット、制度自体がアリか否か、成り立つか否かを検証するために試した結果を共有します。
【実践事例】「社内副業」を試してみた。
私自身が所属する会社には「社内副業制度」はまだありません。そんな中、実際に社内副業を提案し容認いただきました。
その過程をせっかくなのでマーケティング視点で紹介します。(私自身がBtoBマーケターの端くれなので)
今回使用するフレームワークは、森岡毅氏の著書「マーケティングとは「組織革命」である」で紹介されている社内マーケティングのフレームワーク5ステップ。それでは、社内副業の提案ストーリーを紹介します。
※社内マーケティングの手法は、「営業が売ってくれない!」社員5,000人企業のマーケターが実践した社内マーケティングのすべての記事が参考になります。
(1)組織文脈の理解
(森岡毅氏「マーケティングとは「組織革命」である」より要約)
今回の提案のゴールは社内副業の容認でした。この提案の最終目的は、会社として社内副業制度を創っていただくこと。しかしながら、こんなことを会社にストレートに提案すると、経営層・人事部門・労働組合など巻き込む部門が多すぎます。
しかも、そもそも私が所属する組織の目的や戦略には合致していないため、私が提案しても受け入れられないことは明白なので手の届くゴールを設定しました。
(2)目的「何を変えたいのか」
(森岡毅氏「マーケティングとは「組織革命」である」より要約)
繰り返しになりますが、今回の提案のゴールは社内副業の容認。具体的には、他セクションのマーケティング支援を行い、報酬は無償ではなく相応の対価をいただくことと設定しました。
報酬に対価を求めた理由は、無償にすると業務命令で他セクションの支援またはプロジェクトを兼務していることと変わらず、社内副業とは言いきれない点が気になったから。
(3)WHO「ターゲットは誰か」
(森岡毅氏「マーケティングとは「組織革命」である」より要約)
今回の提案のターゲットは、意思決定者であるGeneral Managerと、直属の上司であるManagerの2名。
意思決定者の裁量で判断できる提案内容にしたかったからです。
(4)WHAT「メリットは何か」
1.相手にとってメリットの魅力が足らない
2.実現可能性が低い
3.コスト(時間・費用など)が高い
相手を説得する法則は、「魅力は高く、実現性も高く、コストは低く。」当たり前だが、この理解が大事。人を動かしたいのであれば、自身の提案を相手にとってローリスク・ハイリターンに近づくようにポジショニングすべき。
(森岡毅氏「マーケティングとは「組織革命」である」より要約)
今回の提案では、上述したターゲットに合わせてメリットを用意しました。
General Managaer(意思決定者)
1.自分が管轄するセクション全体の売上拡大に繋がる(魅力的)。
2.自セクション内で合意形成を取れば良いだけだから労力がかからない(実現性が高い)。
3.コストは○時間分の残業代だから同じ内容を外注するよりはるかに安価で済む(コストが低い)。
Manager
1.本業は就業時間内で、副業は残業時間で行うため、本業には支障をきたさない(魅力的)。
2.副業で発生する残業代は他セクションが払うため、自セクションの利益には関係ない(コストが低い)。
※ 報酬の対価を残業代とした理由
会社の人事制度に踏み込む提案内容では、今回の意思決定者の裁量では決断できなくなります。従って、既にある残業制度の仕組みを活用することに。ちなみに、残業時間で副業することにした理由は、就業時間内は本来の業務があり、Managerに迷惑をかけてしまう(Managerにメリットがなくなる)ためです。
(5)HOW「どのようにして満足してもらうか」
(森岡毅氏「マーケティングとは「組織革命」である」より要約)
意思決定者との信頼関係の構築は日頃から意識していました。
例えば、自身のスキルを客観的に示す”上級ウェブ解析士”資格の取得。また、自セクション内でのデジタルマーケティングの成功事例を関係部門に共有や他セクションを巻き込み社内勉強会の主催などを地道にコツコツと。(最も重要なことは、間違いなく日々のコミュニケーションです)
おかげで「デジタルマーケティングのことなら○○(筆者)」というイメージ植え付けにたまたま成功していました(笑)
だから今回の提案はメリットが確実に伝われば、提案自体は承認いただけるだろうと考えてました。
おまけの後日談 -あわや提案却下!?-
上述のストーリーでGeneral Managerへの提案は成功し、結果的に社内副業をやらせてもらえることになりました。しかしながら、この提案ストーリーで失敗したと感じる部分も…。失敗事例をおまけで紹介します。
失敗したことは、提案書の表紙タイトルを「社内副業のご提案 -他セクションのWEBマーケティング(SEO対策)支援」としたこと。
General Managerとしては、”副業”というキーワードが凄く引っかかったようです。。
表紙ページを見せただけで、何を考えてるんだと言わんばかりに一方的なマシンガントークを浴び続けること、3分間(笑)
3分耐え忍んだ後で「まず内容だけでも聞いてください」と再度切り出し、最終的には容認いただきましたが、正直却下されるかと思うくらい危なかった(苦笑)
よくよく振り返ると、刺激的で自分目線のタイトルであったことが問題だと猛省。。タラレバですが、相手の立場にたったタイトルにしておけばスムーズに話が進んだであろうと思います。
※今回、提案した相手は上司であり人事部門ではありません。故に、所属する会社としての動きや制度とは全く関係ありません。
そして「社内副業」の実践。その成果は?!
今回実践した社内副業の業務は、ウェブ施策(SEO対策)。報酬はこのような働き方に関する人事制度がないため、対価を残業代に置き換えていただきました。また、就業時間中は本業があるため、社内副業を行う時間帯は就業後または就業前としました。
副業の業務は、約3ヶ月間、打ち合わせは4回。作業時間も入れると計20時間。3C分析およびターゲットキーワードや戦略ページのコンテンツマップ設計、既存ページのSEO視点での改善、業界専門サイトへの商品サービス掲載などを行いました。何よりも大切にしたことは、他セクションの実務担当者がSEO対策の考え方や多少のテクニックを習得できるよう、教えながら活動したこと。
成果に関しては、すぐに効果が出るものではないため検索順位などいくつかの数値の推移をウォッチしている状況ですが、他セクションの実務担当者のWEBマーケティング活用に関する意識が変わったことは目に見える大きな変化でした。
「社内副業制度」はアリなのか?個人のメリットは?
私自身が社内副業のトライアルを経験した結果、「社内副業制度」は改めてアリだと感じました。
以下に、自ら実践して改めて感じたメリットを具体的に説明します。
(1)個人のスキル(専門性)を磨くことができる
日本企業は良くも悪くもジョブローテーションが多く、1つの分野で専門性を極めることが難しい現実があります。その点、社内副業は個人のスキルを活かせるため、専門性を活かし磨かれ、経験値が高まります。
(2)好きな仕事ができるため、モチベーションが上がる
好きな仕事ができるときのモチベーションとアウトプットの質の向上は自分でも驚きました。残業時間は増えますが、趣味に没頭して心が病む人はいないのと同じで、心身ともに今まで以上に健康になったと感じました。さらに、モチベーションが上がった結果、自主的に自らの専門性を活かした社内勉強会(これは社内副業ではなく無償)を継続開催するなどの変化が起きました。
社内副業制度の会社としてのメリットは?
(1)組織に活力を与えることができる
会社の組織は、外部の知見による新たな発見や刺激を受けて、ステップアップする場合があります。社内副業で、社内の他部門から専門性の高い個人を組織内に加えることで組織の活性化につながるかもしれません。
(2)適材適所の人事異動が可能になる
「副業」を通してその社員の関心事や適性を知ることができます。結果として、適材適所の人事異動がしやすくなるかもしれません。
まとめ
「社内副業制度」を実践した経験談とメリットを紹介しました。私はマーケターであり、人事のプロではないため実際に運用するとなると課題や弊害も出てくるかもしれません。こんな制度成り立つわけないだろって否定的な声もあるかもしれません。しかしながら、上手くルール作りをして活用すれば良い制度になると感じています。トライアルいう位置づけでも良いので何らかの形で試してみる企業が増えれば嬉しい限りです。
そして、今回の記事、本ブログのテーマである「BtoBのデジタルマーケティング戦略」とは全く関係ない内容ですが、この記事を書いたのには理由があります。
私が一方的に尊敬している、元GEの飯室淳史氏は仰っています。
また、著書を読んで刺激を受けた元USJの森岡毅氏は仰っています。
御二方の考え方に刺激を受けて、少し違う形ではありますがBtoBマーケターである私が実践した内容を徒然なるままに記事として書き留めました。
私自身も含め、組織や制度に不満を言う方は多いですよね。でも、飲み屋で愚痴やあるべき論をいくら語っても何も変わらないんだよねってつくづく思っています。
だからさ、
まずは、自分ができる範囲で行動しよう。
行動したら、アカルイミライが開けてくる。
そんなことを思う、30代後半、真夏の夜、徒然なるままに。
参考:副業や転職を考えるときに立ち止まって読みたいおすすめ本
副業や転職を考えるときは、いまの状況にふと疑問を感じたり、将来を見据えたときにこのままで良いのかと立ち止まっている状態が多いのではないでしょうか。
人生の、仕事のキャリアをどう描いていくか、自分はどんな存在なのかが重要であって、副業や転職は目的を達成する手段に過ぎません。
そんな状態の方におすすめの本をいくつかご紹介します。ちなみに、単純に副業で収入を増やしたいという目的の方におすすめしている本ではありません。
※本記事は、個人の見解であり、所属する会社とは一切関係ありません。
以上、「社内副業(複業)を実践してみたらメリットがよくわかった。」の記事を紹介しました。