BtoBサイトに携わっているマーケターやウェブ担当者が意外におろそかにしているのが、いかに集客するかという視点。
より良いコンテンツ作りに精を出すのは重要だが、それと同じくらい集客施策も力を入れないと、ウェブサイトには来てくれない。
開店休業状態に陥ってしまうのだ。
BtoBの場合、一般的に課題認知⇒比較検討⇒評価⇒導入のプロセスで購買が進められる。このプロセスの上流、「課題認知」と「比較検討」のステージで、インターネットで検索する人が非常に多い。
つまり、多くのBtoBサイトでは、いかに「検索」を制すかが集客施策のポイントになる。
そこで今回は「検索」を制すため、事業の成長に貢献するキーワードの選定方法をツール紹介とセットで解説しよう。
本記事の最後で「重点対策キーワードの選定に役立つツール6選」をダウンロードできます。お手元においてご活用ください。
なぜ、BtoBサイトではキーワード選定が重要なのか。
遊園地もBtoBサイトもマーケティングの基本は同じ
BtoBプロダクトは、BtoCプロダクトであるカメラや日用品のように多くの一般消費者には馴染みがないため、特殊なマーケティングが必要なように思われる傾向がある。
しかしながら、マーケティングの基本はBtoBもBtoCも同じである。
例えば、身近な遊園地とBtoBサイトを比べてみよう。
遊園地に携わるマーケターは、いかに遊園地に来てもらうか(集客)、園内で楽しんでいただくか(行動)、楽しんだ対価としてお金を使い、また来ていただくか(ゴール)を考えて施策を立案実行する。
実はこの3つの軸はBtoBサイトも同じ。
サイトに来ていただき(集客)、コンテンツを見ていただき(行動)、資料ダウンロードをしていただく(ゴール)の流れで、サイトを構築していくと事業の成長に繋がる良いサイトになる。
遊園地 | BtoBサイト | |
マーケターのミッション | 売上を伸ばす | 事業を伸ばす |
売上ロジック | 売上=人数×客単価 | 売上=受注数(商談数×商談化率)×受注金額 |
集客 | 遊園地に来ていただく | サイトに来ていただく |
行動 | 園内で楽しんでいただく | コンテンツを見ていただく |
ゴール | 飲食、グッズなどを購入いただき、また来ていただく | 資料ダウンロードや見積もり依頼をしていただく |
この3つの軸の中で、集客を深堀りしてみよう。
BtoBプロダクトの”集客”のメインは「検索」である。なぜなら、多くのBtoBプロダクトは、検索からの流入が多数を占めているからだ。
参考までに、私が管轄している事業や支援している事業を6つほど下図にまとめた。
円グラフの青色が「自然検索」からの流入比率。多くの事業で自然検索が過半数を超えており、中には80%を超えているBtoBプロダクトもある。
つまり、BtoBサイトの“集客”施策の一丁目一番地は「検索」を制すことなのだ。
※広告施策を行っている場合は自然検索の比率は大きく変わります。
参考:Announcing: 2017 Google Search Click Through Rate Study(Internet Marketing Ninjas(インターネット・マーケティング・ニンジャズ)社が公開した2017年のデータ)
上記は海外の調査結果なので、国内は異なるのではないかと思い、私自身も本サイトのデータをベースに調査したことがあります。ご興味ありましたらご高覧ください。
Google検索のクリック率と掲載順位の関係が気になるから、海外の3つの調査結果と国内のサイトを比較してみた|note
しかしながら、ただやみくもにキーワードを選定してコンテンツを公開し「検索」を制すれば良いわけではない。ゴールに繋がるキーワードを選定することが重要である。
ゴールに繋がるとはどういうことか。
例えば、勤怠管理システムを売りたいのに、”事業継承”などといった勤怠管理システムの検討に繋がらないキーワードでがんばって集客しても事業の成果には貢献しない。
至極当たり前のことだが、検索対策ばかりが頭にあると、ゴールに繋がるキーワードを選定することを意外と忘れてしまいがちなので気をつけて欲しい。
重点対策キーワードを選定し、コンテンツ強化で集客力をアップした事例
キーワードを選定し、キーワードに沿ったコンテンツを強化するとどのような成果につながるのか。
参考までに事業会社のマーケターである私自身の事例で解説する。
これは、私が管轄しているBtoB商材の1つ。
顧客の購買プロセスを意識したコンテンツ設計を行い、リスティング広告などの広告費を一切使わず、検索エンジンからの集客を伸ばした事例だ。
3年で約7倍(内、自然検索に至っては約17倍)の集客数を実現した。
もちろん、集客を伸ばしただけでなく、最終的な成果である受注は4.4倍に伸びた。
参考までに、自然検索で1位表示されているおもなキーワードは「商品のカテゴリワード」「商品に関連する一般名称ワード」など。
実施した施策は、
1. 競合他社や市場ニーズがあるキーワードを徹底的に分析し重点対策キーワードを選定。
2. 購買プロセスに沿って検索意図・課題を推測しマインドマップでページ構造を決める。
3. コンテンツを8ページ公開。
(ものすごく大変でした…苦笑)
重点対策キーワードを選定するときの考え方
繰り返しになるが、検索ボリュームがあるキーワードを適当に選定して、コンテンツを強化し集客を増加させても意味がない。
強化すべきは、リード獲得や見積り依頼などのゴールに繋がるキーワードである。
それでは、ゴールに繋がるキーワードを見つけるにはどうすれば良いかを解説する。
顧客の購買プロセスを意識する
顧客の意思決定フェーズに応じた適切なキーワード設計を行うことがポイントになる。
上図の「顧客の購買プロセス」は、どのように購買を意思決定するのか、意思決定までの思考をパターン化し、モデル化したものだ。
自社の顧客は、どのような競合製品・サービスと比較し、どのような観点で、どの程度の時間をかけて検討・評価し、決定の判断をするのか。
これらを把握できれば、対策すべきキーワードも決まります。
この考え方は、私の見解よりもLEAPT(レプト)の戸栗さん(@ShoheiToguri)の知見が非常にわかりやすく参考になります。
3C分析で漏れなく調査!重点対策キーワードの選定に役立つツール6選
重点対策キーワードを選定するときは、3C分析を意識すると漏れがなく進められる。
キーワード選定の3C分析は「自社⇒競合⇒市場」の順で行うのがおすすめ。
なぜなら、市場ニーズから入るとどのキーワードが重要かわからないため、拡散しすぎて収拾がつかなくなるからだ。
まずは自社を把握し、競合を調査し、それらの情報をもとに市場ニーズと照らし合わせると効率的にキーワードを選定できる。
①Googleサーチコンソール【自社視点】
<目的>
自社で流入を確保できているキーワードを洗い出し、検索順位やクリック数を確認する。
<分析の視点と手順>
Step1. どのようなキーワードで集客できているのか(クリック数でソート)
Step2. どのキーワードに検索ニーズがあるのか(表示回数でソート)
Step3. 集客力を改善できる可能性があるキーワードはないか?(社名やブランド名などの指名ワードを除いて分析)
②Google広告(リスティング)【自社視点】
<目的>
リスティング広告で実際に検索されているキーワードの「表示回数」や「クリック数」を確認する。
<分析の視点と手順>
Step1. どのようなキーワードで集客できているのか(クリック数でソート)
Step2. どのキーワードに検索ニーズがあるのか(表示回数でソート)
③競合分析ツール【競合視点】
<目的>
競合他社が流入を確保しているキーワードを洗い出す。
<分析の視点と手順>
Step1. 「Ubersuggest」または「Keywordmap」画面で競合URLを入力し検索をクリック。
Step2. 流入キーワードや検索流入が多いページを調査する。
④サジェスト検索 (ざっくり知りたい場合)【市場・顧客視点】
<目的>
キーワードが、どんな関連語と一緒に検索されているか調査する。10語だけのため、ざっくり調査するのに役立つ。
<分析の視点と手順>
Step1. Googleでキーワードを検索する。
Step2. ページ下部に表示される関連ワードを確認する。
⑤共起語・関連語調査 (細かく調査したい場合)【市場・顧客視点】
<目的>
Googleのサジェスト機能で表示されるキーワードを細かく調査する。
<手順>
Step1. 「goodkeyword」サイトで検索する。
Step2. ページ右欄に表示されるキーワードをコピーしEXCELなどに貼り付けて確認する。
⑥Googleキーワードプランナー【市場・顧客視点】
<目的>
キーワードの検索ボリューム(=市場ニーズ)を調査する。
<分析の視点と手順>
Step1. 「キーワードプランナー」サイトを開く。
Step2. 「検索のボリュームと予測のデータを確認する」をクリックし、⑤で抽出した関連キーワードをコピーし貼り付けて、「開始する」をクリックする。
Step3.キーワードの表示回数を見ると、検索ボリュームがわかる。
参考:キーワードの順位を定点観測する方法
選定したキーワードを意識したコンテンツを公開したら、検索順位をウォッチしよう。
おすすめの無料ツールは「GRC」。キーワードの検索順位トラッキングができる。
使い方はかんたん。“順位を調査したいURL”と”キーワード”を登録し、Windowsスタートアップに登録。すると、毎日Windows起動時に自動的にGRCが起動し、順位チェックを開始し、チェックが終了したら閉じる。
つまり、普段は何も意識しなくても勝手に検索順位のログがたまるのだ。
ユーザーの生の声を聞き、ツールは補助的に使おう。
紹介したツールはいずれも筆者が普段から使っているものである。
ただ、これだけ紹介しておきながら最後に否定するようでいささか申し訳が、これらのツールはあくまで補助的な位置づけとして使って欲しい。
多くのBtoCプロダクトはマーケターの自分が最終消費者になれるため、課題や要望を想像しやすいが、 BtoBプロダクトは自分がユーザーになれることは限りなく少ない。
だから、今回紹介したツールを使いこなす前に、まずは直接ユーザーと会って、生の声を聞くことを強くおすすめする。
生の声は定性情報ではあるが、3人程度にヒアリングするだけで集客のヒントはすぐに得られるだろう。
まとめ。BtoBプロダクトはキーワード選定が肝
BtoBプロダクトはキーワード選定が重要。これを根気よく徹底的に行えるか否かで成果は大きく変わる。
今回紹介した分析と選定手法は、無料ツールでも十分にできるので、この機会に徹底的に分析してウェブサイトに反映することをおすすめする。
まとめると、
・重点対策キーワードの選定は、自社⇒競合⇒市場の順番で3C分析を行う。
・【自社】①Googleサーチコンソール、②Google広告(リスティング)
・【競合】③競合他社が流入を確保しているキーワードを分析、④サジェスト検索
・【市場・顧客】⑤共起語・関連語調査、⑥Googleキーワードプランナー【市場・顧客視点】
以上です。
キーワードを選定できたら、顧客の購買プロセスに沿ってキーワードを構造化し、ペルソナに落とし込むとコンテンツ制作の際に関係者で共通のイメージを持ちやすくなる。
ちなみに、普段私が使っているフレームワークは下図である。
・キーワード構造化マップとペルソナ設計(PPTX)
・キーワード選定に役立つツール6選(PDF)
※お申込みの際は、当サイトのプライバシーポリシーをご一読ください。
参考:キーワード選定&PDCAを効率化する有料サービス
今回紹介した手法は人力でも手間をかければできます。
しかしながら、無料ツールを駆使ししてもできないことはありませんが、正直膨大な時間がかかります。
キーワード選定、集客改善の分析、コンテンツ制作をインハウスで行う場合は、下記ツールの導入を検討することをお勧めします。
分析を効率化できる有料サービスは「ミエルカ」「エイチレフス」「keywordmap」「ランクトラッカー」などがあります。それぞれメリットがあるので、導入の際はよく検討することをおすすめします。
以上、「BtoBサイトの集客力をアップする!重点対策キーワードの選定に役立つツール6選」の記事を紹介しました。
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自社サイトをWEBマーケティングに活用するためのヒントをまとめています。
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<戦略編>
<サイト構築編>
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- BtoBサイト トップページの作り方
- BtoBサイト 展示会出展レポートページの作り方
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- BtoBサイト 課題解決ページの作り方
<テクニック編>